水槽は心のバロメーター

熱帯魚・水草育成の備忘録

テトライニシャルスティックとテトラクリプトの成分

イニ棒イメージ図

イニ棒イメージ図

俗に愛称で呼ばれるところの「イニ棒」こと「テトライニシャルスティック」と「テトラクリプト」の成分、日本語版だと商品説明にも公式ホームページ等にも何も書いていないので長年謎だった。

そのためネットではその原材料・成分、使い方や効果に関して様々な俗説が散見される。

しかし海外版パッケージを見れば一応原材料と保証成分量表示がしっかりされている(日本語版に表示されないのはたぶん手間と法律の関係)。

とはいえ、

  • 日本で売られているものと海外で売られているものの中身が同一ではない可能性
  • 製造過程の都合や商品の仕様変更で原材料等が変更されたりする可能性

もあるから、手元の日本語版イニ棒やクリプト錠の中身がネットで拾う海外版パッケージの能書き通りである保証はない。

しかし一応参考にはなるだろうから少し調べてみた。

結果として、個人的に長年の疑問が解けて嬉しかったポイントは次の通り。

  • イニ棒は単に草木灰を固めたものではない。
  • テトラクリプトは単にイニ棒を整形し直したものではない。
  • イニ棒は有機肥料(土壌改良材)で遅効性、テトラクリプトは化成肥料で速効性を期待できる。

以下、詳しく見ていく。

テトラ イニシャルスティックの原材料・保証成分(海外版)

テトライニシャルスティック海外版の説明書(原材料・成分表示)

テトライニシャルスティック海外版の説明書(原材料・成分表示)

Tetra Plant Initial Sticks 250ml Aquarium Plant Fertiliser : Amazon.co.uk: Pet Suppliesより(2024/01/08閲覧)。

見た目から単純に草木灰を固めたものかと思っていたが全然違うようだ。

以下、成分等表示の機械翻訳

原材料:ピート(泥炭)
  • 有機土壌材料(採掘された泥炭(ボグピート) - 分解度H5-H8)
  • 粘土ミネラル(ベントナイト)
  • 植物性材料(藻)
  • 微量成分:全マグネシア(MgO)1.13%
  • 全硫黄(S)0.91%

詳しいことは分からないが要するにヨーロッパで豊富に採掘されるボグピート(泥炭)を水槽内で使いやすく固めたものであるらしい。

保証成分
  • 全窒素(N)0.58%
  • 全リン酸(P2O5)0.09%
  • 全酸化カリウム(K2O)0.39%
  • 有機物含有量36%。

「窒素・リン酸・カリ」の構成比に直せば「6・0〜1・4」といったところか?(自信はない)。他の肥料とくらべて元々含まれている栄養自体は控えめだ。それよりも着目すべきは「有機物含有量36%」の表示だろうか。

「土壌改良材」「有機土壌材料」という表示もされていることからして、窒素リン酸カリ等の栄養を直接速効で補給しますよ、という趣旨のものではないようだ。土壌(水槽の底床)に埋めておけば土壌中の微生物等による分解の過程で水草にとっていい感じに作用しますよ、という機能を期待すべきものらしい。水槽セッティング時に底床に少し腐葉土を混ぜたりすることがあるが、要するにそれと同じような効果を期待できるものというべきか。どのように作用するかは水槽の環境によってかなり異なるのだろう。

しかし、そう考えると「保証成分」として「窒素1x%・リン酸0.x%・カリx%」等最初から表示されているものは、「有機的に作用し…」等説明されていても、厳密には全て速効性の化成肥料というべきなのかもしれない。

テトラ クリプトの原材料・保証成分(海外版)

テトラ クリプト海外版の説明書(原材料・成分表示)

テトラ クリプト海外版の説明書(原材料・成分表示)

Tetra Crypto 770454 10 Tablets plant fertiliser : Amazon.co.uk: Pet Suppliesより(2024/01/08閲覧)。

テトラクリプトは「イニシャルスティックを固めただけのものではないか?」という見解も見かけた気がするが、「個体カリウム肥料」と表示されているからには、「有機土壌改良材」と表示されているイニシャルスティックとはおそらく中身も全く異なるものだろう。

イニ棒が有機肥料というべきものだとすれば、クリプトはいわゆる化成肥料に分類できるのではないか。

原材料(微量成分表示のみ)
  • ナトリウム(Na):8.9%
  • 硫黄(S):4.3%
保証成分量
  • 水溶性カリウム(K2O):12%
  • 水溶性ホウ素(B):0.8%
  • 水溶性鉄(Fe):0.9%(EDTAキレート)
  • 水溶性マンガン(Mn):0.3%(EDTAキレート)

ほぼカリウム+ミネラルといったところか。

あえて「窒素・リン酸・カリ」の構成比に直してみると「0・0・12」でいいのだろうか(自信はない)。

日本語版パッケージの裏面にも「リン酸と硝酸塩は含有していません」と紹介してあるので実際リン酸等は含まないんだろう。「植物の組織に必要な微量元素が含まれています」とも書いてあるが、ホウ素、硫黄、ナトリウムがこれにあたるんだろう。

イニシャルスティックとクリプト錠の効果・使い方

両者の原材料・保証成分を見比べると、結局「イニシャルスティックは遅効性の肥料(というか底床改良材)」「テトラクリプトは速効性の肥料」という日本語版パッケージの控えめな説明や愛好家諸氏が語る経験則通りの使い方をすれば良いというところに落ち着く。

テトラ イニシャルスティックの効果・使い方

イニ棒に関しては、基本的には栄養のない砂利に埋めて使うことを想定されているだろうが、栄養を使い果たしたソイルに使っても効果は期待できるだろう。

ただ、砂利底床に使うにせよ、ソイルに使うにせよ、その土壌改良材と謳われる性質からして、どうやらしっかり埋めて使ったほうが高い効果が期待できそうだ。

テトラ クリプトの効果・使い方

テトラ クリプトに関しては、埋めて使う速効性化成肥料としては他の類似商品と比較して相当に使い勝手がいいものではないかと個人的には思う。

理由は次の通りだ。

  1. 含有栄養素がほぼカリウムのみ(他の化成肥料は水草用とうたわれていても多量の窒素、少量のリン酸を含む事が多い)
  2. 樹脂コーティングされていない(すぐに溶け出す)
  3. 要求量が少ない(40リットルに対して1粒)
  4. もともと割って使うことを想定されている(日本語版パッケージ裏書きにも「錠剤を割って」使用する旨書いてある)ことから、狙ったポイントに小さく割って使いやすい(液肥は水槽全体に拡がるし、固形肥料でもピンポイントで埋めて使うにはサイズが大きすぎるものも多い)

ただし、実際に水量20リットル弱程度の小型水槽で使おうとすると、かなり細かく割って使うことになるので、少し使いにくい。そこそこ分厚いタブレットなので、割るのがとてもめんどくさい。

 

以上、愛好家の参考になれば嬉しい。

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